【ネタバレあり】映画「鑑定士と顔のない依頼人」あらすじと感想・考察【おすすめミステリー】

こんにちは、ラッコです。

Amazon Primeで配信中の「鑑定士と顔のない依頼人」というイタリア映画を鑑賞しました!

ラストに衝撃のどんでん返しがあるという触れ込みで、定期的に話題に上がっている印象のある本作。

早速ご紹介していきます!

目次
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概要

題名鑑定士と顔のない依頼人(原題:la migliore offerta、The Best Offer)
公開年2013年
監督ジュゼッペ・トルナトーレ
キャストジェフェリー・ラッシュ(鑑定士/ヴァージル)
ジム・スタージェス(機械職人/ロバート)
シルヴィア・フークス(依頼人/クレア)
ドナルド・サザーランド(ヴァージルの友人画家/ビリー)
公式サイトなし

あらすじ

主人公ヴァージル・オールドマンは、一流の美術鑑定士であり、オークションの競売人も務める人物。
女性が苦手で、結婚歴も恋愛経験もない初老の孤独な男性だ。
しかも極度の潔癖症で、常に手袋をはめ、電話口には布を挟んで話すほど。

唯一の楽しみは、長年かけて集めてきた女性像の絵画を、一人静かに鑑賞すること。
そのために友人の画家ビリーと結託し、本物の絵画を理由をつけて贋作と鑑定し、オークションに出品。
そして安値でビリーに落札させ、自らのコレクションに加えていた。

そんなある日、ヴァージルのもとに「亡き両親のコレクションを鑑定してほしい」という一本の電話が入る。
依頼人はクレアという女性で、「どうしてもあなたにお願いしたい」と強く懇願するが、約束の日になっても姿を見せない。

やがて、彼女が姿を現さない理由を知ったヴァージルは、声だけのやりとりを重ねるうちに、次第にクレアに心惹かれていく――。

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感想・考察

まず、本作を鑑賞予定の方がいらっしゃったら、ここで読むのをやめていただくことをおすすめします。
この映画はできるだけ何も知らずに観た方が確実に楽しめます。

らっこ

それでも感想が知りたい!という方はこのまま続きを読んでね

ざっくり感想 ※ネタバレなし

テンポの良さに引き込まれる

はじめに、映画全体のテンポはとても良く、序盤からスッと物語に入り込むことができました。
導入部分が長い作品だと、「早く何か起きないかな」ともどかしく感じてしまいますが、本作は次々に展開が訪れるため、「次はどうなるんだろう」と前のめりのまま、最後まで集中して楽しむことができました。

伏線が散りばめられたストーリー

ストーリーは過度に複雑ということもなく、自然と頭に入ってきます。
事前に「どんでん返しがある」と聞いてはいたのですが、あえて深く構えず素直な気持ちで鑑賞した結果、わたしは見事に騙されました笑
疑いの目を持って観ていれば、なんとなく展開を予測できる方もいるかもしれません。

また、伏線と思しきシーンはわかりやすく散りばめられているため、気になる場面は意識して覚えておくと、より深く楽しめるのではないかと思います!

魅力的に描かれた登場人物たち

登場人物の数もほどよく、それぞれのキャラクターが明確に描かれているため、「誰がどんな性格なのか」が自然と把握できました。
主人公である鑑定士・ヴァージルは、潔癖で頑固な性格ゆえに、常にひとりで行動する「堅物で少し面倒くさそうなおじいさん」といった印象を受けましたが、顔の見えない依頼人と関わるうちに、少しずつ人間味が感じ取れるようになりました。
砕けた一面が見えてくると、次第に健気さが伝わってきて、思わず感情移入してしまいました。

惜しい部分もあるけどおもしろい!幅広く勧められる1本

「もう少しこの部分を丁寧に描いてくれていたらなあ」と、少し物足りなさを感じる場面もありましたが、そのあたりは観る側の想像力に委ねられているのかもしれません。

とはいえ、全体としてはとても観やすく、純粋に楽しめる作品でした。
幅広い層の方におすすめできる一本だと思います!

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ここからネタバレあり ※未鑑賞の方は注意

最後に待ち構える衝撃の結末

ラスト20分、物語は一気に反転し、怒涛の展開が押し寄せます。

広場恐怖症(agoraphobia)を患い、外に出られず家に閉じこもっていたクレア。
その事情を知ったヴァージルは、少しずつ言葉を交わしながら、やがて彼女にとって最も信頼できる存在へと変わっていきます。

そしてついに、二人の距離は恋人同士にまで縮まり、ある日、ヴァージルはクレアを自宅へ招き入れました。
家の案内を終えた後、ヴァージルは長年集めてきた秘蔵の絵画コレクションを見せ、「ここで一緒に暮らしてほしい」とプロポーズ。
クレアは思わず抱きつき、「何があってもあなたを愛している」と答え、まるで感動的なラブストーリーの幕切れを予感させる瞬間――。

しかし、その期待は無惨に裏切られます。

競売人を引退することを決めたヴァージルは、最後の仕事のためロンドンへ。
有終の美を飾り、仲間からの労いを受けて意気揚々と帰宅しますが、肝心のクレアの姿がありません。
「外出しているのだろう」と深く考えず、クレアが持ち込んだ“母をモチーフにした”という一枚をコレクションに加えようと、例の部屋へ向かいます。

そして、扉を開けた瞬間――。

見上げた壁にはなんと、一枚の絵も残っていませんでした。
長年かけて集めたコレクションはすべて持ち去られ、そこにあるのは、ただの空白。
ヴァージルは、言葉もなくその場に立ち尽くすしかありませんでした。

らっこ

自分以外に部屋に入れるのはクレアだけ。でもクレアがやったとは信じたくない・・・そんな思いが立ち尽くす背中から伝わってきたよ

人生で初めて愛した人と、大事に集めてきた絵画コレクションその両方を一気に奪われることになったヴァージル。

クレアがいない…そしてヴァージルがあの部屋へ向かう――このあたりで「もしかして…?」と覚悟はしていました。
でも、あんなに幸せそうだった彼が、一瞬でどん底に突き落とされる姿は、見ていて本当に悲しい気持ちになりました。

この映画は、最初から最後までヴァージル目線で描かれてるので、観ているわたしたちも彼と同じ情報しか持ってません。
だから、この展開は完全に不意打ちです。
わたしもヴァージルと一緒に、見事に彼らに騙された気分でした。

ヴァージルが見えていなかったもの

クレアがヴァージルの家に持ち込んだ、“母をモチーフにした”というバレリーナの絵。
コレクションの盗難に気づいたヴァージルは、その絵を裏返します。
すると、そこには「ビリー」の名前が――。
この瞬間、友人であり画家のビリーこそが首謀者だったと悟ります。

さらに、機械職人ロバートと、“クレア”を演じていた女性も共犯。
ということは、別荘の管理人も、ロバートの恋人として紹介されたサラも・・・なんと全員グル。
気が付けば、ヴァージルと関わっていたほとんどの人間が、最初から彼を欺くための犯人だったのです。

らっこ

ヴァージルを除く主要な登場人物はみんな犯人・・・!
ヴァージルの人間関係は一気にめちゃくちゃに・・・

ヴァージルとビリーは、絵画を安く手に入れる詐欺を共に行う仲でしたが、その関係は決して対等ではありませんでした。
ある計画では、本物の絵を贋作と鑑定し、オークションでビリーが落札するはずが、別の人物に競り負け失敗。
ビリーは事前に本物だと知らされておらず、激怒するヴァージルに困惑します。

ヴァージルは「必要のない情報」と割り切っていたのか、それともビリーを信頼していなかったのか——。

さらにヴァージルは、画家であるビリーの作品を「絵が好きなだけでは一流になれない」「ビリーの絵には”内なる神秘性”が欠けている」と酷評していました。
鑑定士としての評価であっても、友人としては深く傷つく言葉です。

こうした積み重ねが、ビリーの中に不満を蓄積させ、今回の犯行へとつながったのかもしれないなと感じました。

そして、クレアが持ち込んだ“母をモチーフにした”バレリーナの絵。
これがビリーの作品だと見抜けなかったのは、優秀な鑑定士でありながら、ヴァージルが友人の絵に真剣に向き合っていなかった証拠とも言えます。
もしもっと目を向けていれば、彼の計画を見破れたかもしれない——そう思うと、何とも皮肉な結末ですね。

クレアの発言

クレアが姿を消し、コレクションも盗まれた後、ヴァージルは急いで別荘へ向かいます。
しかし門にはチェーンがかかり、まるで空き家のような状態。
開かないと分かっていながら門を掴んで揺らすヴァージルの表情は、怒りとやるせなさ、そしてどこか悲しみが混ざり合い、個人的には一番胸が痛くなるシーンでした。

その足で、別荘近くにあり以前からたびたび訪れていた喫茶店へ。
マスターに別荘のことを尋ねると、「ここからじゃよく見えないから、窓際に座っている“クレア”に聞いてみな」と言われます。

そこにいたのは、これまでヴァージルが店を訪れるたび、意味深に数字を唱えていた小人症の女性。
彼女こそが本物の“クレア”であり、別荘の真の持ち主だったのです。

ここで初めて、これまでの物語の裏側が明らかになります。

本物のクレアは、驚異的な記憶力を持ち、別荘への出入りをすべて覚えていました。
そして、広場恐怖症で外に出られないはずだった“偽クレア”が、この1年半で実に237回も外出していたことを告げます。
つまり、病気というのは最初から嘘だったのです。

ヴァージルが一度、アポなしで別荘を訪ねた際、“偽クレア”が姿が見えず、周囲を巻き込んでの大捜索になったことがありました。
その日のヴァージルは、競売を取り仕切りながらも終始上の空で、挙げ句の果てに皆から笑われる始末。
結局“偽クレア”は、病気によるパニックを起こしたのか、別荘の隠し部屋でボロボロの姿で見つかりました。
しかし、”偽クレア”は広場恐怖症という病気などは患っていません。
ヴァージルがアポなしで訪ねてきたため、タイミング悪く外出していたのだと考えられます。
帰宅して事態を知り、慌てて隠し部屋に隠れたのでしょう。

さらに、本物のクレアの証言から、別荘はこの2年間、機械職人ロバートが借りていたことも判明します。
急いでロバートの修理工房へ向かうも、そこはすでにもぬけの殻。
この瞬間、ヴァージルはロバートも共犯だったと確信するのです。

機械職人ロバートとオートマタの存在

本作の重要な要素のひとつに、「オートマタ」の存在があります。

クレアからの依頼で、ヴァージルが初めて別荘を訪れた際、彼は錆びた歯車のような金属部品を発見しました。
その後も別荘を訪れるたびにパーツを持ち帰り、機械職人のロバートに見せるうちに、これが1700年代の名工ヴォーカンソンの作ったオートマタの一部ではないかと判明します。

ヴォーカンソンのオートマタのオリジナルは現存しておらず、もし復元が実現すれば大変な価値を持つことに、二人は大興奮。

らっこ

「部品は、湿った床の上に”錆びている面を上にして”置かれていた」という違和感から興味を持ったというヴァージル。これがビリーによって計算されて置かれていたものだったらすごいよね

正直、このオートマタがなくても、ストーリーの大筋は成り立ちます。
しかし、オートマタの部品が集まり、完成に近づくにつれて、ヴァージルとクレアの関係性も進展していくという連動が、この作品に深みを持たせているともいえます。

ヴァージルは、別荘で部品を見つけロバートの元へ持っていきますが、その度にクレアとの関係について相談します。
恋愛上級者であるロバートのアドバイスを素直に受け取り実行に移すヴァージルは、序盤の堅苦しい雰囲気が吹っ飛び、とても健気でかわいらしく見えました。

「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」

コレクションが盗まれた部屋には、ロバートが完成させたと思われるオートマタが置かれていました。
ヴァージルが近づくと、仕掛けが作動し、オートマタに仕込まれた録音機が再生されます。

そこから繰り返し流れるのは、
「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」
「そのとおりだ」
「会えなくて寂しいよ」
という言葉。

この「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」という言葉は、もともとヴァージル自身の言葉です。
贋作を見分ける方法として、どんなに実物そっくりに描かれていても、贋作画家の手癖という“本物”が必ずどこかに潜んでいる、という意味でした。

しかし、ビリーはそれを皮肉として使っていました。
実際、ヴァージルは別荘にあった骨董品(偽物)の中に、ビリーの絵(本物)が紛れていることに最後まで気づかなかったのです。
計画を見抜くチャンスは何度もあったのに、ビリーはヒントを与え続けたにもかかわらず、ヴァージルは最後までそれに気づけませんでした。

クレアがヴァージルにもたらしたもの

最終的に、人生をかけて集めてきた絵画のコレクションと、愛していた“偽クレア”の両方を失ったヴァージル。
かつての生き生きとした姿は影を潜め、疲れ切った様子で老人ホームで暮らし、リハビリに励む日々が映し出されます。

一見、そのまま静かに生涯を終えるかと思われましたが、リハビリの成果で体が動くようになると、ヴァージルは一人列車に揺られプラハへと向かいます。

かつて“偽クレア”が訪れたと語っていた、プラハの「ナイト&デイ」というお店へ向かうためです。

ヴァージルは、“偽クレア”との関係が偽物だったとわかりながらも、その中にどこか本物がないかと探し続けていました。
そして、「ナイト&デイ」が実在していたことで、彼女の言葉にも本物の想いがあったと感じたヴァージルは、彼女との時間や言葉を信じることに決めたのです。

頭のいいらっこ

「いかなる贋作の中にも本物が潜む」は作品全体を通して重要な言葉だね

“偽クレア”に出会わなければ、ヴァージルは人を愛することも知らず、堅物なおじいさんのまま静かにその生涯を終えていたことでしょう。
彼が“偽クレア”を家に招いたときの言葉からも、かつての自分の人生に満足していなかったことがうかがえます。
だからこそ、彼女と出会い、愛を知ることができたのは、ヴァージルにとってかけがえのない出来事だったのだと思います。

体がボロボロになってもリハビリに励み、プラハまで「ナイト&デイ」という店を探しに行こうとするその熱意からも、彼女への深い想いと愛が感じられます。

物語は、ヴァージルが無事に「ナイト&デイ」にたどり着き、店内で“偽クレア”を待ち続けるシーンで幕を閉じます。

もしヴァージルが騙されていたことに注目すれば、物語はかなりのバッドエンドとも言えます。
しかし、「ナイト&デイ」に“偽クレア”が訪れる未来を想像すれば、この物語はハッピーエンドにも変わり得るのです。

このまま騙されて終わってはヴァージルが報われないので、個人的には「ナイト&デイ」に早々に”偽クレア”が訪れることを願うばかりです。

まとめ

今回は、Amazon Primeで配信中の「鑑定士と顔のない依頼人」をご紹介しました!

テンポ良く進むストーリーと魅力的なキャラクターたちに引き込まれ、最後まで飽きずに楽しめる作品でした。
どんでん返しや伏線も巧みに散りばめられていて、やはり、何も知らずに観るのが一番楽しめると思います。

美術やミステリーが好きな方はもちろん、幅広い層におすすめできる映画です。
気になった方はぜひ観てみてください!

ここまで読んでいただきありがとうございました。

それでは。

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