こんにちは、ラッコです。
今回はAmazon Primeで配信中の映画「侍タイムスリッパー」を鑑賞しました。
自主制作のいわゆるインディーズ映画で、予算2600万円のうちの2000万は安田淳一監督自身が自腹で用意したのだそう。
最初は1つの映画館での上映でしたが、口コミでじわじわ広がり上映館も増え、いまや興行収入は10億円を突破した大ヒット作です。

監督は、予算捻出のためにホンダNSXを手放したとか・・・
映画公開時の口座残高は6245円だったらしい
ジャンルは SF × 時代劇 × コメディ。
時代劇にほとんど触れてこなかった身分なので『大丈夫かな?』と思いながら観たのですが・・・
とても観やすく、しっかり楽しめました!
早速ご紹介していきます!
作品概要
題名 | 侍タイムスリッパー |
公開年 | 2024年 |
監督 | 安田淳一 |
キャスト | 山口馬木也(高坂新左衛門) 冨家ノリマサ(風見恭一郎) 沙倉ゆうの(山本優子) 峰蘭太郎(殺陣師関本) |
公式サイト | 「侍タイムスリッパー」公式サイト |
あらすじ
時は幕末。
会津藩士・高坂新左衛門は、長州藩士を討つよう命じられ、一対一で斬り結んだその瞬間――落雷に遭い、気を失ってしまう。
目を覚ますと、そこは現代の京都・太秦の時代劇撮影所。
周囲から役者と勘違いされ、混乱のまま街へ飛び出した高坂は、自分が守ろうとした江戸幕府がとうに滅んでいることを知る。
過去に戻る術を探しながらも、お寺に身を寄せることになった高坂。
やがてひょんなことから時代劇に出演することになり、次第に“斬られ役”という存在に魅力を見出していく。
会津での記憶と現代での生活。その狭間で葛藤しながら、高坂はやがて「生き抜く意味」と向き合っていく————。
感想・考察
これから鑑賞される方へ
低予算でも妥協なし!溢れ出る「時代劇」への情熱
観終わってまず感じたのは、監督の“時代劇への熱い思い”です。
人情や武士道といった時代劇ならではの魅力を、タイムスリップという形で現代劇に落とし込んでいて、普段あまり時代劇を観ない自分でも気軽に楽しめました。
低予算ながらも殺陣にはかなり力が入っていて、迫力あるシーンが盛りだくさん。
さらに、時代劇撮影の裏側までもが丁寧に描かれていて、“映画をつくる熱”そのものがスクリーン越しに伝わってくるようでした・・・!
山口馬木也さんが体現する“本物の侍”
そして本作のヒット要因のひとつは、やはり山口馬木也さんの“リアルな侍像”ではないでしょうか。
方言や立ち姿、鋭い視線。そのひとつひとつが本物の侍のようで、まさにハマり役!
まるで高坂という人物の“生き様そのもの”がスクリーンに刻まれているようで、観ているこちらまで彼を知り尽くした気分になります。
さらに、和装姿があまりにも板についているため、髪を切って現代的な服装になった姿には逆に違和感を覚えてしまうほどでした。



沢村一樹さんと唐沢寿明さんを混ぜたような渋い方だったね〜〜〜
笑いと涙の絶妙なリズム
時代劇を描く熱い映画ではありますが、作中には楽しく観られる工夫が散りばめられており、まさに“笑いあり涙あり”の作品でした。
主人公・高坂は生真面目な性格ゆえに、現代社会では空回りしてしまうこともしばしば。
ですが、その真面目さと、空回りしたときのコミカルな行動とのギャップが、観ている側の笑いを誘います。
一方で、自らの過去を振り返り、今の自分の情けなさに気づく場面は胸に迫るものがあり、侍としての誇りや生き様がじんわりと伝わってきます。
笑わせながらも泣かせる、この絶妙なリズムは本作の大きな魅力です。
重くなりすぎず、それでいて深みを感じられるバランスの良さは、エンタメ作品として秀逸でした。
低予算でも輝く、映画の可能性
冒頭でも触れた通り、本作の制作費はわずか2600万円。
邦画の平均が3〜4億円と言われる中で、かなりの低予算作品です。



“低予算からの大ヒット”と聞くと『カメラを止めるな!』(2018年)を思い浮かべたなあ
安田監督自身もその存在を意識していたそう・・・!
映像面では、確かにところどころチープさが目立ったり、どこか平成初期の昼ドラを思わせるような雰囲気が漂ったりもします。
けれど、肝心のストーリーや時代劇の描写はとにかく丁寧で、観ていて安っぽさを感じさせない力強さがありました。東映京都の協力による殺陣シーンも本格的で、スクリーンから“本物感”が伝わってきます。
何より、情熱と誠実さがにじみ出ていて、「観客をとことん楽しませたい!」という心意気がストレートに届く。
だからこそ、深く構えずとも素直に楽しめる、観ていて気持ちのいい映画でした。
低予算でもこれだけの熱量を持った作品が作れるのだと実感できる、まさに“映画の可能性”を感じさせる一本です。
時代劇に馴染みがない方にもぜひおすすめしたい作品です!
ここからネタバレあり ※未鑑賞の方は注意
本物の侍が挑む“斬られ役”
物語の前半では、現代に迷い込んだ高坂が斬られ役として歩み始めます。
特に印象的だったのが、殺陣の師匠・関本さんとの練習シーン。
高坂自身が斬られて終わる、という練習なのに、本物の侍であるがゆえに思わず刀を受けてしまい、ついには逆に関本さんを斬ってしまうという、まさに笑いどころとして盛り込まれた場面。
さらに関本さんは、そんな高坂に合わせて全力で「斬られた演技」をしてくれるうえ、最後には関西弁で小さなツッコミまで入れる。テンポのいい掛け合いはまるで漫才のようで、思わず笑ってしまいました。
そのやり取りからは、どこか新喜劇のような関西のお笑いを感じる部分があり、京都出身の安田監督の色が出ているシーンでもありました。
演技に光る!侍ならではのこだわり
そんな笑いの裏で、高坂は着実に斬られ役としての姿勢を磨いていきます。
撮影で使う刀は、本物の刀(真剣)よりもずっと軽いということに気が付き、演技の中で、いかに「重さ」を感じさせるかを工夫する高坂。
これは本物の刀を扱ってきたからこそ気づけるポイントであり、他の斬られ役との動きの違いを監督からも評価される場面でした。
ただ教わったことをそのままこなすのではなく、自分なりに改善しようとする姿勢からは、彼の侍としての誠実さや真面目さが伝わってきます。
現代に馴染んでもなお、高坂が侍らしさを失わない理由が、こうした細やかな心構えに表れているように感じました。
時代劇界のスター、風見恭一郎との衝撃の出会い
物語が大きく動くのは、「風見恭一郎」という有名な時代劇役者が登場するシーンです。
風見恭一郎は、元々高坂と同じく斬られ役出身で、十数年前まではテレビや映画で主役を張っていた時代劇界のスター的存在。
そんな風見が、ハリウッドからも注目される武者小路監督とともに、新作の時代劇映画を京都で撮影するというビッグニュースに、斬られ役仲間たちは楽屋のテレビを見ながら大盛り上がりです。
その直後、高坂は館内アナウンスで呼び出され、会議室に向かうと、なんとそこに風見本人が!
さらに驚くことに、高坂に例の映画で準主役の敵役をお願いしたいというのです。
実は風見、かつて高坂が対峙した長州藩士・山形彦九郎で、30年前にタイムスリップして現代で時代劇俳優として生きていたことが明かされます。
かつての敵が現代で再び出会い、今度は時代劇の世界で敵同士を演じるこの展開には胸が熱くなりました。
高坂は最初、かつての相手に対して複雑な思いを抱いていましたが、関本や優子の後押しもあり、出演を決意。
かつて対峙した二人が、作中作のスクリーン上で再び相見える展開は、あの日の戦いのやり直しを彷彿とさせ、観ているこちらもドキドキさせられました。
本物の侍が時代劇に込める想い
撮影が開始され、二人はひとつひとつのシーンと真剣に向き合い、順調にこなしていきます。
長い間時代劇から離れていたにもかかわらず、全く衰えていない風見の殺陣の腕前に、高坂は感心します。
しかし、まだ仲良くなるには抵抗があるらしく、適度な距離を保ちながら撮影に臨む様子は、意地を張った子供っぽさが垣間見え、思わず微笑んでしまう場面です笑
そして、撮影の途中、風見が時代劇から身を引いていた理由が明かされます。
かつての幕末の時代で、一度だけ人を斬った経験があるという風見。
時代劇で敵を斬る演技をするたびに、当時のイヤな感触や相手の死に際の表情が蘇り、そのせいで毎晩うなされるほど辛い思いをしていました。
この状況にもう限界だと感じた風見は、時代劇から身を引くことを決意したのです。
それでも今回、風見が再び時代劇に出演しようと覚悟を決めた背景には、彼自身が侍であるがゆえの強い使命感がありました。
「時代劇が今の世に合わなくなってしまった」「みんなが楽しめる本物の時代劇を残したい」「あの時代を精一杯生きた者たちの思いをなんとか残したい」という風見の言葉には、過去を生きた者としての誇りや、かつての仲間たちの思いを背負い、時代劇を守りたいという熱い想いが込められています。
その想いは、高坂とのやり取りや現場の仲間たちにも大きな影響を与え、二人の関係性が深まる重要な転換点となっています。
会津藩の悲劇と、高坂の決断
このまま順調に進むかと思われた撮影も、脚本の変更で状況が一変します。
明治維新後の描写が追加され、台本を読み始めた高坂は、自らが所属していた会津藩が長州藩をはじめとする新政府軍に敗れ、凄惨な最期を迎えたことを知ります。
初めて触れるその事実に、かつての仲間たちを思い出したのか、感情が込み上げて涙を流してしまうのです。
会津藩が迎えた結末は想像以上にひどいもので、私たちが歴史として学んできた出来事の裏側には、計り知れない犠牲があったのだと改めて実感させられました。
それ以降の高坂は撮影に集中できず、心ここにあらずといった様子でセリフを何度も飛ばしてしまいます。
自分の不甲斐なさにがっかりして、それまでの威勢のよさがすっかり影を潜めてしまいました。
しかし高坂は、この作品に、そして自らの人生に正面から向き合うために、ひとつの結論にたどり着きます。
それは、時代劇としてはもちろん、映像作品全体を見渡しても前代未聞といえる「真剣を使った撮影」という危険な提案でした。
かつての宿敵である風見恭一郎——すなわち長州藩の山形彦九郎——と本気で決着をつけようと決意したのです。
この決断は、高坂がかつての仲間たちの思いに応えるために下したものであり、その熱意は風見の胸にも響きました。涙ぐみながら高坂の提案を受け入れる風見の姿は、とても印象的でした。



監督があまりにもあっさりと受け入れていて、展開的にはありがたいけど「マジか」と思ったよ笑
いざ真剣勝負!立ち向かうは・・・
真剣を使うことが決まった高坂は、師匠の関本に迷惑をかけまいと、剣心会を抜ける決断をします。
当然、関本は真剣を使うことに反対し、『撮影は見に行かない』と言い放ちます。
それでも決意を変えない高坂の姿勢には、揺るぎない覚悟を感じさせられました。
そして迎えた撮影当日。
医師や看護師まで配置された厳戒態勢のもと、現場には独特の緊張感が漂います。
真剣を使った撮影がいかに危険で異例かが、その場の緊張感からひしひしと伝わってきました。
スタッフたちが見守る中、いよいよ撮影開始。
高坂と風見はカメラに背を向け、『殺陣ではなく仕合をする』という約束を交わします。これは、嵐の夜に決着できなかった因縁をここでやり直す宣言でもありました。
無念のうちに散った会津の仲間たちに顔向けするため、高坂は風見=山形彦九郎と、ついに本物の刀で向き合うのです。
それでも両者の表情が晴れやかだったのが、とても印象的でした。
そして始まる、予定調和を超えた本物の斬り合い。
力の入り方や息遣い、互いの表情まですべてが真に迫っていて、観ているこちらも思わず息を呑みました。
命を懸けた戦いの緊張感が画面越しに伝わってきます。
激しい攻防の末、刀を叩き落とされたのは風見。
首を討つべく刀を振り上げた高坂でしたが—————
振り下ろしたのは相手ではなく地面。
会津の仲間に顔向けするためにも風見を討つべきだと自らを追い込んでいた高坂ですが、その刃を最後には振るうことができなかったのです。
張り詰めた緊張の糸が切れたように、高坂は荒い呼吸をしながら、「俺は情けない男だ」と涙を流しうなだれます。
そんな彼に対し、風見は「互いにこの国を思い、己の信じる道を精一杯生きた。それでよいではないか」と笑みを向けます。
高坂の想いに真正面から応えた風見は、本気の戦いの中でもずっとその答えを用意していたのかもしれません。
最後は、師匠の関本とも和解し、高坂は再び斬られ役としての道を歩むことになります。
そして迎えるラストシーン。
撮影所の片隅に、あの嵐の夜に高坂と共に山形を討ちに向かった会津藩の仲間が、なんと現代に姿を現すのです。
結局、あの夜に居合わせた3人全員が現代にタイムスリップしてきてしまった——という、コミカルな締めくくりはまさに本作にぴったりでした。
最後の最後まで観客を楽しませようという工夫に満ちていて、熱さとユーモアが共存する、まさにエンタメとして完成度の高い作品でした!
ド直球ストレートの観ていて気持ちがいい映画なので、とてもおすすめです。
まとめ
今回はAmazon Primeで配信中の映画「侍タイムスリッパー」をご紹介しました!
笑って泣ける時代劇コメディで、ユーモラスながら胸を打つ脚本が心に残る、とても魅力的な作品でした。
また、安田監督の熱い情熱が映像から伝わってきて、最後まで惹きつけられました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
それでは。
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