【後半ネタバレ】映画「悪い夏」あらすじと感想

こんにちは、ラッコです。

今回はAmazon Primeで配信中の映画「悪い夏」を鑑賞しました。

主演・北村匠海さんのどこか虚ろな表情が印象的なキービジュアルに惹かれて。
社会の闇と人間の弱さをえぐるようなサスペンス・エンターテインメントです。

さっそくご紹介していきます!

目次
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作品概要

題名悪い夏
公開年2025年
監督城定秀夫
キャスト北村匠海(佐々木守)
河合優実(林野愛美)
伊藤万理華(宮田有子)
毎熊克哉(高野洋司)
箭内夢菜(莉華)
竹原ピストル(山田吉男)
木南晴夏(古川佳澄)
窪田正孝(金本龍也)
公式サイト映画『悪い夏』公式サイト

あらすじ

市役所の生活福祉課でケースワーカーを務める主人公・佐々木守。
ある日、先輩の宮田から、「同僚の高野が生活保護受給者の女性に問題を起こしているらしい」と相談を受ける。

真相を確かめるため、宮田とともに該当のシングルマザー・愛美のもとを訪ねるが、彼女は問題を否定。
それでも佐々木は、気づかぬうちに複雑で危険な世界に巻き込まれていく―――。

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感想・考察

これから鑑賞される方へ

想像以上にエンタメ感満載!

「市役所職員の不祥事を確かめようとして、主人公が巻き込まれていく」というあらすじから、がっつりサスペンスかと思っていましたが、実際にはかなりエンタメ要素が強めでした
想像とは違ったけど、これはこれで感じるものがたくさんあっておもしろかったです。
(あとから公式サイトを見たら、“サスペンス・エンターテインメント”とあったので、なるほどと納得)

これから鑑賞される方は、エンタメであることを踏まえて観た方がより楽しめるかと思います!

キャストが豪華!リアルな演技に注目

北村匠海さんには、個人的にクリーンで爽やかな印象を持っていたので、こんなドス黒い演技もするのか!と驚きでした。
でも佐々木の性格自体は真面目でおとなしく、そのギャップも見どころです。
物語が進むにつれて佐々木が闇に飲まれていく変化の描写は圧巻で、彼の本性が出るというよりは、余裕を失ったことでストッパーが外れてしまったようなリアルさがありました。

河合優実さんもさすがの演技で、ぶっきらぼうだけどどこか掴みどころのない愛美の役を自然に体現していました。
「あんのこと」や「ナミビアの砂漠」と役柄の系統が似ている印象。
お顔や雰囲気と役柄がバッチリあっていて、なおかつ演技がものすごく上手で、とても引き込まれました。

その他、窪田正孝さん、竹原ピストルさん、伊藤万理華さん、箭内夢菜さん、木南晴夏さんなど演技派の俳優陣がそろっており、それぞれのキャラクターが際立ち、作品全体の面白さをぐっと引き上げていました。

観ている側がすべてを知ることで生まれるスリル

本作は、観客が状況の全貌を把握できるように描かれている点も特徴的です。

普通のミステリーやサスペンスだと、人物の意図や伏線が徐々に明らかになることで緊張感を生むものですが、「悪い夏」ではその手法はあまり使われていません。
誰がどう悪いことをしているか、どんな計画が進行しているかが最初から分かるので、登場人物の心理や行動の変化に注目して楽しめます。

特に宮田のキャラクターは、正義感が強く、一見潔白そうに見えますが、その行動や人間性には意外な一面もあります。
こうしたギャップが、作品全体の“クズとワルしか出てこない”世界観をより際立たせていて、観ていて引き込まれます。

スリルと人間ドラマが交錯する「悪い夏」

豪華キャストによるリアルで引き込まれる演技、そして主人公・佐々木が徐々に悪へと引き摺り込まれていくスリル満点の展開が見どころの映画でした!

一見クリーンに見える人物も、実は弱さや裏の顔を抱えていることが見えてくるので、観ている側は常にハラハラ。
「市役所職員の不祥事」というテーマから想像するよりも、エンタメ要素や人間ドラマが濃く、最後まで目が離せません。

社会の闇、正義感の脆さ、そして人間の弱さや強さが描かれた、まさに「悪い夏」という題名がぴったりの作品でした。

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ここからネタバレあり ※未鑑賞の方は注意

同僚の不祥事が、すべての始まりだった

主人公の佐々木は、地味で真面目な市役所職員。
担当する生活保護受給者の山田が明らかに仮病で働いていない様子でも、強く言い返すことができず、相手の勢いに押されてしまうタイプです。

対して、同僚の宮田は、そうした不正受給者を許せない、強い正義感を持った女性。
職場の先輩・高野が、自分の立場を利用して生活保護受給者に肉体関係を強要していると知るや、上司に報告する前に、自ら真相を確かめようと行動します。
そして、気の進まない佐々木を半ば強引に巻き込み、調査に踏み切るのです。

二人は当事者である林野愛美の家を訪ね、高野について聞き込みを行いますが、愛美は終始否定。
結局その場では何も掴めないまま、調査は空振りに終わります。

訪問の途中で、佐々木は愛美の娘・美空と出会い、彼女が欲しがっていたクレヨンを買ってあげることを約束します。
真面目な佐々木は、その小さな約束を履行。
この行動が、彼にとって“仕事の延長”ではなく、“個人的な関わり”の始まりになっていくのです。

佐々木は、高野の行為を「悪いこと」だと理解してはいても、いち市役所職員として、自分がそれを正さなければという使命感までは持っていませんでした。
正義感の強い宮田に引っ張られるように動いていたにすぎず、どこか他人事のまま。

その中途半端な姿勢のせいで、結果的に“職員として正しい形で愛美を助けること”はできず、勤務時間外に個人的に林野家を訪ね、生活の手助けをする──という、根本的な解決にはならない道を選んでしまう。
そこに、彼自身の「優しさ」と「弱さ」の両面が現れているように感じました。

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生活保護の闇、裏で進む計画

一方の林野愛美は、育児放棄寸前のシングルマザー。
自分を強く持てず、いつも周りに流されながら生きている女性です。

自身の担当職員である高野からは、生活保護費を盾に体の関係を迫られ、さらに受給額から三万円を抜かれています。
「断ったら受給を止める」と脅され、拒むこともできない。
こうした描写から、愛美はずっと“搾取されながら生きてきた側”の人間なのだと感じました。
人を頼らないと生きていけない一方で、頼る相手がことごとく悪意を持って近づいてくる。
その悪循環から抜け出す力が、彼女には残っていなかったように思います。

そんなある日、愛美は友人の莉華に、高野のことをうっかり話してしまいます。
すると、莉華の愛人である裏社会の男・金本が、その話に興味を示し、“ある計画”を持ちかけてきます。
その金本の下で動く山田は、偶然にも佐々木の担当する生活保護受給者でした。
彼らは愛美を利用し、高野の不貞行為をビデオに収めて、その映像で高野を脅そうとしていたのです。
そして、高野を窓口に、ホームレスたちに生活保護を不正受給させ、その金を搾り取る算段まで立てていました。

窪田正孝演じる金本は、若くして複数の風俗店を経営する男。
敵に回したら絶対に怖いタイプで、どこかフィクション的な存在なのに、不思議と現実味もある。
「日本のどこかに、こういう闇が本当にあるかもしれない」と感じて、ぞっとしました。
お金や力を持っているからこそ頼もしく見えるけれど、一度でも関わったら最後、もう抜け出せない。
その“紙一重の怖さ”が、観ていてとても印象に残りました。

やがて、愛美は金本の指示で高野の不貞をビデオに収めることに成功します。
しかし、ちょうどその頃、宮田と佐々木が愛美の家を訪れ、高野について聞き込みを行っていました。
市役所側に高野の不祥事が知られれば計画が台無しになると判断した金本は、その場で計画を中止します。

ただ、この“計画の中止”は、物語を終わらせるどころか、登場人物たちの関係をより複雑に絡めていく始まりでもありました。

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歪んだ人間関係が動き出す

金本が怒りをあらわにして去ったあと、取り残された山田は電話で愛美と話します。
その会話の中で、「訪ねてきた職員の一人が自分の担当である佐々木だった」と知り、彼は愛美の家を訪れることにします。
佐々木がどんな様子か知りたかったのか、計画の後始末を話したかったのか・・・
訪れた理由ははっきりしませんが、ただ、その選択が、思いがけない方向へ事態を動かしていくことになります。

同じ夜、佐々木もまた、美空が欲しがっていたクレヨンを手に、もう一度林野家を訪れます。
宮田と一緒に訪問したときとは違い、その足取りには、律儀さと真面目さに加えて、どこか“個人的な情”が混じっているように見えました。
貧しさと孤独の中で懸命に生きる母娘を思い浮かべると、放っておけなかったのかもしれません。

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しかしその家には、すでに山田が潜んでいました。
佐々木が部屋に入る前に、山田は咄嗟に物陰に隠れ、三人のやりとりを静かに見つめます。
そして、そこで新しい標的として佐々木を利用することを思いつくのです。

美空にクレヨンを渡した佐々木は、次第に彼女に情が湧いたのか、美空に少し強く当たる愛美に対して、
「美空ちゃんに、もっと愛情を持って接してあげてください」と穏やかに諭します。

けれど佐々木は、家庭を持ったこともなく、愛美たちの事情を深く知らない、ただの市役所職員です。
山田のときもそうでしたが、佐々木には“相手を理解する前に、正論を語ってしまう”癖があるように見えました。
綺麗事の裏に、どこか現実を知らない甘さが透けて見えて、山田が佐々木をよく思っていなかった理由がわかります。

佐々木の言葉は、やはり愛美の心を逆撫でします。
「クレヨン買ったくらいで偉そうにしないでよ」
そう言い返した愛美の口から、次に出たのは、思わず漏れたような一言。
「……だったら、助けてよ」

自分でも意図していなかったその言葉には、愛美自身がもうどうにもならない現実の中で、誰かに助けてほしいという本心が滲んでいました。
そしてその“助けて”という一言こそが、佐々木が一線を越え、“職員として”ではなく“ひとりの人間として”林野家を支えようとするきっかけになっていったのだと思います。

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揺れ動く“計画”と“感情”のあいだで

金本や莉華には知らせず、山田と愛美だけが知る“新しい計画”。

もちろん、そんな裏の事情を知るはずもない佐々木は、その後も林野親子と密接に関わっていきます。
休日、公園で美空と遊んだ帰り、3人でファミレスに入ったときのこと。
愛美は、同情を引きたかったのか、それとも心を許したふりをしたのか、「高野と関係を持っていた」と佐々木に打ち明けます。

一瞬、戸惑いの色を見せた佐々木でしたが、やがて優しい表情で彼女を見つめ返します。
その瞳には、軽蔑ではなく、彼女たちを守りたいという衝動のようなものが宿っているように感じました。

翌日、彼はひとりで高野の家を訪ねます。庭先では、子どもとプールで遊ぶ高野の姿。
金本に脅されて以来、仮病で職場を休み続けている彼に、佐々木は静かに「仕事を辞めてほしい」と伝えます。

市役所の職員としてなら、上司に報告するのが筋ですが、それでは愛美を傷つけてしまう。
佐々木は、職務の正義よりも、ひとりの人間として彼女を守る道を選んでしまったのです。

それからというもの、愛美から届く「美空が会いたがっている」というメッセージに誘われ、彼は退勤後に林野家を訪ねるようになります。
一緒に食卓を囲み、笑い合う時間が増えるほどに、彼の中で“職員としての責任”と“個人としての想い”が少しずつ交錯していきました。

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愛美は、計画通り佐々木を誘おうとするも、彼はいつも穏やかな笑顔のまま、一歩だけ距離を置く。
けれど、その穏やかさの奥には、愛美に惹かれていく気持ちが見え隠れしていました。
立場と良心がそれを押しとどめている、そんな微妙な均衡の中で、二人の関係は少しずつ形を変えていったのです。

一方、職を失った高野は妻に離婚を告げられ、居場所をなくした末に、金本の経営する店で働き始めます。
佐々木が高野を訪ねたことを知った金本は、なぜ彼が愛美のためにそこまでするのかを疑い始め、山田は計画の露見を恐れて、愛美に“早く映像を撮れ”と圧をかけます。

そして、一緒に過ごす時間が日常になりかけたある日。
佐々木と美空がサプライズで愛美の誕生日を祝った夜、美空が眠りについたあと、二人はとうとう一線を越えてしまいます。

しかし愛美は、カメラが仕掛けられた部屋を避け、映らない別の部屋へ佐々木を連れ込みました。
計画のために近づいたはずが、気づけば彼を騙せなくなっていた愛美。
これまで人の言いなりで生きてきた愛美が、初めて自分の気持ちを選んだ瞬間でした

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貧困が生む、もう一つの影

佐々木と愛美の関係が進んでいく一方で、物語にはもう一人、貧困に苦しむ女性が登場します。

木南晴夏が演じる古川佳澄は、やつれた顔の主婦で、4年前に夫を亡くし、息子と二人で慎ましく暮らしています。
身なりを気にする余裕もなく、日々の生活は常にギリギリの状態でした。

ある日、スーパーで買い物中、ふとした拍子に商品を自分の鞄に落としてしまったことをきっかけに、佳澄は“それで得られる一時の安堵”に取り憑かれていきます。
そこから、彼女の小さな万引きが日常化していくのです。

ようやく工場に採用され、働き口を見つけた佳澄。
佳澄の身の上を知った同僚の女性から「生活保護を受けてみたら?」と勧められますが、「みんなの税金だし、気後れしちゃって……」と答え、乗り気ではない様子。
万引きをしている一方で、“税金で助けられること”には罪悪感を抱くという、その矛盾した感情が、妙にリアルで胸に刺さりました。

しかしその直後、佳澄はスーパーでの万引きを店員に見つかってしまい、せっかく手にした仕事も失ってしまいます。
万引きはもちろん悪いことですが、自己主張ができず、いつも周囲に気を使って生きている彼女の姿が、木南晴夏の肩身の狭そうな演技によって際立ち、観ていて痛々しく、心が締め付けられました。

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逃れられない闇の中で

佐々木と心を通わせ、山田との計画をそれとなくかわしていた愛美。
莉華からの着信も無視していましたが、ある日、公園で美空と遊んでいるところを莉華に見つかってしまいます。

ほどなくして、金本は何も知らないふりをした山田を連れ、林野家へ。
部屋には、拘束された愛美の姿がありました。

愛美からこれまでの経緯を聞いた金本は、自分に内緒で山田が動いていたことに激怒。
さらに、愛美が佐々木に惚れてしまい、計画どおりに動画を撮っていないことを知ると、
「美空を売り飛ばそうか」と脅し、愛美に“今度こそ佐々木との行為を撮る”よう強要します。

らっこ

金本がフライパンで山田の顔を殴った瞬間は思わず目を背けたよ

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高野との件を知られてしまったことで、完全に金本の支配下から抜け出せなくなった愛美。
佐々木と心を通わせ、ようやく普通の生活を取り戻せるかもしれない・・・。そんな希望が見えた矢先でした。

一度この世界に足を踏み入れた人間が、どうしても抜け出せず、搾取され続ける構造の残酷さに、ただ絶望するしかありませんでした。

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揺らぐ正義とまっすぐな言葉

不正受給をしていた高齢の受給者に、自ら辞退のハンコを押させるほど、仕事に熱を入れはじめた佐々木。
その変化に気づいた宮田は、「見違えたね」と微笑み、どこか探るような目をして言います。
「やっぱり愛の力ってすごいんだね」

佐々木が林野家に通っていることを、宮田はすでに知っていたのです。

佐々木は隠すことをやめ、愛美と真剣に付き合っていること、そして高野に辞職を迫ったことを正直に話します。
宮田は「黙っていてあげる代わりに」と切り出し、高野の現在の居場所を探ってほしいと頼みました。

なぜそこまで高野にこだわるのか尋ねると、宮田は言葉を選ぶように、ゆっくりと答えます。
「不正受給者の不誠実さに対抗できるのは、自分たちの潔白さだけ。
高野さんを見逃したら、その最強にして、たったひとつの武器を失うことになる。」

宮田の言葉はまっすぐで、正しくて、金本たちのような裏の世界と比べると、とても眩しく見えました。

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正義の喪失と転落

その日、いつものように林野家を訪れた佐々木を待っていたのは、愛美だけではありませんでした。
部屋の中には、金本、山田、そして莉華の姿。異様な空気が漂っています。

そして、金本に促されるまま座らされ、見せられた画面には、愛美と自分の行為の映像が映っていました。
金本は軽々しく、しかし圧のある声で言い放ちます。
「これを市役所に送られたくなければ、こっちが指定したナマポ(生活保護)の申請を全部通せ。」

佐々木が何を聞いても、愛美は顔を伏せたまま。
金本は佐々木に近づき、「お前はハメられたんだよ。もう二度と抜けらんねえからな」と告げます。
これは、佐々木にとっての地獄の入り口でした。

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それから、彼の窓口には次々とホームレスたちが訪れるようになります。
佐々木は無表情で、ただ機械のように淡々と申請を通していきます。

宮田に「高野の行方は?」と問われたとき、佐々木は「……いい加減にしろよ」とついに怒りをあらわにします。

愛美と出会ったことで初めて芽生えた“自分なりの正義”は、結局、彼女に裏切られ、踏みにじられてしまった。
その痛みを抱えたまま、不正受給に加担する立場に堕ちた佐々木は、事情を知らず、ただまっすぐ正義を語る宮田に、嫌気が差したのだと思います。

理想を失い、悪の構造の中で駒として生かされるしかない姿には、堕落というより“心の崩壊”すら感じさせられました。

らっこ

佐々木は、もう潔白さとか言ってられる場合じゃないもんね

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果たせなかった正義

ここでようやく、古川親子と佐々木の物語が交わります。

水道代を払うことすらままならず、携帯も止められてしまった佳澄。
解雇されたことで働き口もなく、万引きもできない。
追い詰められた彼女が、とうとう生活保護の窓口にやってきます。

しかしその時、対応したのは、精神的に崩壊しかけた佐々木でした。
苛立ちと無力感を抱えたままの佐々木は、古川親子に対して「本当にどうにもならないのか」と冷たく突き放してしまいます。
佳澄はただ申し訳なさそうに、何度も「すみません」と頭を下げるばかり。

長く頑張ってきた末に、最後の頼みの綱だった行政に助けを求めたにもかかわらず、「まだ努力が足りない」と暗に否定されてしまった佳澄。
本来、最も支援を受けるべき人が救われないという、最悪の事態が起きてしまいました。

そしてその後、佳澄は息子を巻き込み、練炭自殺を図ります。
親子ともども意識不明の重体となり、警察が事情を聞きに市役所を訪れたことで、佐々木は初めて、自分が取り返しのつかないことをしてしまったと気づくのです。

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すべてが交錯する夜、そして大乱闘

帰宅した佐々木は、キッチンから包丁を手に取り、愛美と共に自らの命を絶とうとします。
その最中、山田が止めに入りますが、そこへ金本と莉華が帰宅。混乱の中、愛美が包丁を奪い金本に向ける事態に。

止めに入ろうとした莉華が巻き込まれ、彼女のお腹に刃が刺さります。
山田は急いで車を用意しようとしますが、さらに訪問者が到来。それはなんと高野です。

自分を家族から引き離し、堕落させた金本たちへの怒りを抱え、復讐にやってきたのです。(最初に愛美に手を出したのは高野なので、自業自得ですが…笑)

莉華は救急車を呼んでほしいと助けを求めますが、金本は高野を止めようと殴りかかります。
そんな中、さらに玄関には宮田も登場。
「(高野)洋司さん!」と叫びながら駆けつけた宮田は、実は高野と不倫関係にあり、愛美に手を出したことや、黙って宮田の前から姿を消したことに怒っていたのでした。
正義感や身の潔白さを振りかざしていた宮田の行動も、その裏には不倫があったと思うと、この一連の事件すべてが、どこかバカらしく思えてきます。

金本の恐ろしさを知らない宮田は、金本を押し退けて高野の元へまっすぐ突進。
こうして林野家は一気にカオス状態に。物語に登場するクズとワルがギュッと詰め込まれ、本作のサスペンス&エンタメ要素が凝縮されたシーンでした。

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その混乱の最中、愛美は隣の部屋で静かに絵を描く美空と目を合わせます。その瞬間、愛美は美空を連れて大雨の中、窓から逃げ出します。

金本が愛美を追いかけ、高野が金本を追い、さらに宮田が高野を追う…まさにカオス。
観ている側も「何の映画を観てるんだ?」と錯覚するくらい、一気に展開が進んで思わず笑ってしまいます。

乱闘の末、愛美は背後から大きな石で金本を殴ります。その姿を、美空は遠くからじっと見つめていました。

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エピローグ

寒い季節がやってきました。

結局、金本、山田、高野はそれぞれ諸々の罪で捕まります。
石で殴られた金本でしたが、生きていたみたいですね。

一方、宮田はまだ高野への感情を完全に断ち切れていないようで、刑務所の高野宛に手紙を書いています。二人で有給休暇を取って旅行したことや、寒さの心配などを書き連ね、出所する日を心待ちにしているのか、嬉しそうな表情を浮かべています。

らっこ

「愛の力ってすごいんだね」をそっくりそのまま返したい

そして古川親子も無事に命を取り留め、息子が佳澄に買ってもらった大きなお菓子を手にして笑顔を見せる様子が映し出されます。この親子が幸せそうにしている瞬間が見られて本当によかったです。

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莉華は、刺された傷を痛そうに抱えながらも、元気にパチンコを打っている姿が映ります。相変わらずの図太さというか、タフさが滲み出ていて、彼女らしいですね。

佐々木は市役所を辞め、清掃員として新しい生活を始めます。帰宅すると、外に置かれた子供用の傘を手に取り、「ただいま」とドアを開ける──。ここまでしか描かれていませんが、愛美と美空と三人で暮らしていると考えて間違いないでしょう。
観る側としては、ここに至るまでの長い混乱と闇を経て、ようやく彼らに“日常”が訪れたんだと安堵しました。

めでたしめでたし…とはいえ、ここに至るまでの濃密な緊張感を思い返すと、しばらく心に残る作品でした。

まとめ

今回はAmazon Primeで配信中の映画「悪い夏」をご紹介しました!

ただのサスペンスじゃなくて、貧困や権力の悪用、正義と悪の間で揺れる人間模様をしっかり描いているところがよかったです。
エンタメとはいえ、佐々木の正義感と弱さ、愛美の逞しさと葛藤、古川親子の切実な日常……どのキャラクターもリアル。

社会派サスペンス好きにはもちろん、緊張感ある人間ドラマが好きな方にもおすすめです。

ここまで読んでいただきありがとうございました!
それでは。





風俗店を経営するいわゆる裏社会の実権を握っている男・金本

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